第六回八丈航路海鳥調査 2010年 6月
2010年 6月 18日 掲載
2010年 6月 4日（金），八丈航路（東京〜三宅島〜御蔵島〜八丈島航路）で海鳥の調査を行ったので結果を報告する．
目次
乗船した航路は，東海汽船の「東京〜三宅島〜御蔵島〜八丈島航路」，
乗船した船は「さるびあ丸（4973トン）」である．
さるびあ丸
6月 3日（木） 2220 に東京港竹芝桟橋をはなれ，
翌 4日（金）0903 に八丈島底土港に到着．
帰りは 0954 に出港し，20時過ぎに竹芝桟橋にもどった．
風も波もない，おだやかな航海だった．
探鳥を行ったのは，
往路は三宅島錆ヶ浜港の 0500から，
八丈島底土港入港の 0903 まで，
復路は八丈島底土港出港の 0954 から，
東京湾内で暗くなった 1900 までである．
探鳥を行った時間の航跡図を以下に示す（左：往路，右：復路）．
観察は船のAデッキ後部の太陽を背にする舷側で行った．
往路では右舷側，復路では，12時までは左舷側，12時からは右舷側で観察した．
観察方向は基本的に前方である．
出現鳥のカウントは 10分単位（経緯度の 10分ではなく，時間の 10分）で行った．
その際，カウント対象は肉眼で確認できた鳥のみとした．
観察者の視力は両目とも 1.5 である．
観察に用いた双眼鏡は，
キヤノン 12x36 IS，
識別に用いた図鑑は「海鳥識別ハンドブック（箕輪義隆）」．
位置の取得には，エンペックスのハンディGPS
「ポケナビ miniEX（FG-0530）」を使用した．
記録した軌跡データは，帰宅後，パソコン接続用データケーブル「FG-5303」で PC に接続し，
「ポケナビEditor 4.1」で吸い出した．
航海中はよい天気で，
風はほとんど吹かず，波もほとんどなかった．
周辺海域の海面水温分布を見てみる．
（元データ：New Generation SST for Open Ocean Real-time Demonstration Operation）．
黒潮流路が本州に接岸していて，
八丈島周辺より，三宅島・御蔵島から北の方が水温が高かった．
出現鳥：
シロハラミズナギドリ3，オオミズナギドリ10341，ハイイロミズナギドリ2，
ミズナギドリ類6，ウミツバメ類1，ウミネコ6，
ホトトギス声，イソヒヨドリ，スズメ，
ハシブトガラス／10種
備考：
3日（金）2220発の東海汽船「さるびあ丸（4973トン）」に乗船．
0500 三宅島錆ヶ浜港から探鳥開始．
海は風も波もなく，海面にオオミズナギドリの姿が映るほど静かだった．
三宅島から御蔵島周辺には，オオミズナギドリが何千羽も浮かんでいて，
船が近づくと次々に飛び立ち，壮観だった．
御蔵島と八丈島の間で，ひさしぶりにシロハラミズナギドリを見た．
この航路で見るのは，はじめてになる．
航海中，トビウオが 157匹飛んだ．
0903 八丈島底土港入港．
島では，ホトトギスが鳴いていた．
出現鳥：
クロアシアホウドリ2，シロハラミズナギドリ26，オオミズナギドリ8675，
ハイイロミズナギドリ28，ハシボソミズナギドリ2，ミズナギドリ類11，
オーストンウミツバメ1，クロウミツバメ2，ウミツバメ類3，
アオツラカツオドリ1，アオサギ5，ウミネコ4／12種
備考：
乗ってきた「さるびあ丸（4973トン）」で，とんぼ返り．
帰りの海も，よい天気．
八丈島と御蔵島の間で，クロウミツバメを観察．
翼先端の白斑をはっきり確認できた．
御蔵島周辺には，クロアシアホウドリが出現した．
オオミズナギドリは，御蔵島周辺から三宅島にかけても多かったが，
東京湾へ入る手前では，それ以上に多かった．
シロハラミズナギドリは，八丈島から東京湾入り口までの広い範囲で観察された．
ハイイロミズナギドリが 28羽と比較的多く出た．
海面に浮かんでいる個体も多かった．
ハシボソミズナギドリは 2羽と少なめ．
あまり識別に自信がないが．
大島沖で，アオツラカツオドリの成鳥が飛んできた．
船舶が輻輳していたので，別の船に乗ってやってきたのだと思う．
東京湾の入り口で，オーストンウミツバメが観察された．
これは，腰が明るいことで識別．
東京湾内では，アオサギが何羽か飛んできた．
ずっと海鳥を見ていたので，アオサギがカラフルに見えた．
それにしても，東京湾の水は汚い．
1900，暗くなったので，探鳥を中止した．
航海中，トビウオが 111匹飛んだほか，
カツオのような大きな魚の群れがはねるのも観察できた．
航路全体で多かったオオミズナギドリ（Calonectris leucomelas）の分布を緯度ごとにグラフにしてみる（左：往路，右：復路）．
地図上にもプロットしてみた（左：往路，右：復路）．
往路では，三宅島と繁殖地である御蔵島周辺に 9000羽近くが集中していた．
復路でも御蔵島から三宅島周辺で群れが見られたが往路よりは少なく（1500羽程度），
それよりも房総半島沖に多く，1時間で 5000羽以上が観察された．
オオミズナギドリ以外に観察されたミズナギドリ類から，
シロハラミズナギドリ（Pterodroma hypoleuca）とハイイロミズナギドリ（Puffinus griseus）の分布をプロットしてみた．
- 白：シロハラミズナギドリ（Pterodroma hypoleuca）
- グレー：ハイイロミズナギドリ（Puffinus griseus）
往路では，八丈島に近づいたころにシロハラミズナギドリとハイイロミズナギドリが出現している．
復路のシロハラミズナギドリは，御蔵島・三宅島周辺に 15羽と多かったが，東京湾口でも 4羽出現している．
復路のハイイロミズナギドリは，三宅島周辺に 5羽，東京湾口に 15羽が集中して分布していた．
ミズナギドリ類以外の海鳥の復路での分布をプロットしてみた．
各マークは，
- 黒四角：クロアシアホウドリ（Diomedea nigripes）
- 黒三角：クロウミツバメ（Oceanodroma matsudairae）
- 茶色三角：オーストンウミツバメ（Oceanodroma tristrami）
- 水色丸：アオツラカツオドリ（Sula dictylatra）
である．
クロアシアホウドリは，御蔵島・三宅島周辺で観察された．
クロウミツバメは八丈島と御蔵島の間と東京湾口で 1羽ずつ観察されている．
オーストンウミツバメは，東京湾口にいた．
大島沖でアオツラカツオドリが出ているが，船舶が輻輳していたので，
他の船に乗ってきたものと思われる．
0500
- 位置：34-04.1N，139-28.7E，三宅島錆ヶ浜港
- 天候：晴れ，風：よわし
- 観察位置：Aデッキ後部右舷
0500〜0510
- 出現鳥：オオミズナギドリ1650，ウミネコ2
- 備考：0503 三宅島錆ヶ浜港出港．トビウオ2．
0510〜0520
- 出現鳥：オオミズナギドリ890
- 備考：海面をすれすれに飛ぶオオミズナギドリの姿が，海面に映っている．トビウオ5．
0520〜0530
- 出現鳥：オオミズナギドリ1050
- 備考：オオミズナギドリの群れが海面に浮かんでいる．トビウオ3．
0530〜0540
- 出現鳥：オオミズナギドリ1070
- 備考：トビウオ5
0540〜0550
- 出現鳥：オオミズナギドリ1950
- 備考：オオミズナギドリ1800羽が群れて浮かぶ．トビウオ30匹が一斉に飛んでいた．
0550〜0600
0600
- 位置：33-53.8N，139-35.3E，御蔵島港
- 天候：晴れ，風：よわし
0600〜0610
- 出現鳥：オオミズナギドリ120
- 備考：0605 御蔵島港出港．
0610〜0620
- 出現鳥：オオミズナギドリ2050
- 備考：オオミズナギドリの大群が浮かぶ．
0620〜0630
0630〜0640
0640〜0650
- 出現鳥：オオミズナギドリ59，ミズナギドリ類2
- 備考：ハイイロミズナギドリっぽい黒いミズナギドリ類が 2羽海面に浮かんでいた．トビウオ2．
0650〜0700
- 出現鳥：オオミズナギドリ16
- 備考：トビウオ18．トビウオは数匹一ぺんに飛んでいた．
0700
- 位置：33-39.6N，139-37.6E
- 針路：167度，船速：32.9km/h（17.8ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：9時，風：左から，波：小 10時から
0700〜0710
- 出現鳥：オオミズナギドリ46，ミズナギドリ類1
- 備考：トビウオ48．トビウオは 20匹ずつ一ぺんに飛んでいた．
0710〜0720
- 出現鳥：オオミズナギドリ292
- 備考：0717 船が急にピッチングをはじめる．トビウオ4．
0720〜0730
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ35，ミズナギドリ類1
0730〜0740
- 出現鳥：オオミズナギドリ4，ハイイロミズナギドリ1
- 備考：トビウオ2
0740〜0750
- 出現鳥：オオミズナギドリ3，ハイイロミズナギドリ1
- 備考：トビウオ9
0750〜0800
- 出現鳥：オオミズナギドリ10，ウミツバメ類1
- 備考：黒いウミツバメ類がひらひら飛んでいた．
0800
- 位置：33-22.4N，139-44.4E
- 針路：170度，船速：32.6km/h（17.6ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：10時，風：よわし，波：小 11時から
0800〜0810
0810〜0820
0820〜0830
- 出現鳥：ミズナギドリ類2，ウミネコ2
- 備考：大きく黒いミズナギドリ類が，頭を翼に入れて寝ていた．トビウオ2．
0830〜0840
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ2，オオミズナギドリ1
0840〜0850
0850〜0900
- 出現鳥：ウミネコ1
- 備考：0856 八丈島底土港入港作業．
0900
- 位置：33-07.4N，139-49.1E，八丈島底土港
- 天候：晴れ，風：よわし
0900〜0910
- 出現鳥：ホトトギス声，イソヒヨドリ，スズメ，ハシブトガラス
- 備考：0903 八丈島底土港接岸．
0954
1000
- 位置：33-07.6N，139-49.5E
- 針路：0度，船速：14.7km/h（7.9ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：4時，風：右から，波：なし
- 観察位置：Aデッキ後部左舷
1000〜1010
1010〜1020
- 出現鳥：なし
- 備考：大きな魚（カツオ？）が 10数匹はねていた．トビウオ1．
1020〜1030
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，ハイイロミズナギドリ1
1030〜1040
1040〜1050
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ2，オオミズナギドリ2
- 備考：トビウオ1
1050〜1100
- 出現鳥：オオミズナギドリ4
- 備考：トビウオ2．飛ぶトビウオの姿が海面に映るくらいの凪．
1100
- 位置：33-24.1N，139-43.4E
- 針路：350度，船速：33.9km/h（18.3ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：6時，風：よわし，波：小 5時から
1100〜1110
1110〜1120
1120〜1130
- 出現鳥：オオミズナギドリ1，クロウミツバメ1
- 備考：クロウミツバメは翼先端の白斑を確認．トビウオ14．
1130〜1140
- 出現鳥：なし
- 備考：黒い魚が水面に顔を出す．トビウオ5．
1140〜1150
1150〜1200
1200
- 位置：33-40.8N，139-36.8E
- 針路：354度，船速：29.8km/h（16.1ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：直上，風：よわし，波：なし
- 観察位置：Aデッキ後部右舷に変更
1200〜1210
1210〜1220
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ2，オオミズナギドリ8
- 備考：オオミズナギドリが飛びながら身ぶるいをしていた．
1220〜1230
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ8，ウミツバメ類1
- 備考：黒いウミツバメ類が飛んでいた．
1230〜1240
- 出現鳥：クロアシアホウドリ1，オオミズナギドリ15
- 備考：クロアシアホウドリが飛んでいた．トビウオ6．
1240〜1250
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ40
- 備考：御蔵島手前で，船が急に左旋回．何か（網？）を引いた漁船が 2隻いたので，これを避けたのだろう．トビウオ2．
1250〜1300
- 出現鳥：オオミズナギドリ5，ミズナギドリ類2
- 備考：黒いミズナギドリ類が 2羽海面に浮いていた．トビウオ1．
1300
- 位置：33-53.7N，139-35.1E，御蔵島港
- 針路：50度，船速：8.0km/h（4.3ノット）
- 天候：晴れ，風：よわし
1300〜1310
- 出現鳥：ウミネコ2
- 備考：1305 御蔵島港接岸．
1310〜1320
- 出現鳥：オオミズナギドリ243，黒い鳥2
- 備考：1310 御蔵島港出港．高い位置をはばたき飛ぶ黒い鳥が 2羽いた．トビウオ2．
1320〜1330
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ330
- 備考：トビウオ21
1330〜1340
- 出現鳥：クロアシアホウドリ1，シロハラミズナギドリ7，オオミズナギドリ35
- 備考：青い魚がはねていた．トビウオ1．
1340〜1350
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ3，オオミズナギドリ610，ハイイロミズナギドリ1
- 備考：トビウオ2
1350〜1400
- 出現鳥：オオミズナギドリ100，ハイイロミズナギドリ2，ウミネコ1
- 備考：1354 三宅島錆ヶ浜港入港作業．トビウオ．
1400
- 位置：34-04.1N，139-28.7E，三宅島錆ヶ浜港
- 天候：晴れ，風：よわし
1400〜1410
- 出現鳥：ホトトギス声
- 備考：1401 三宅島錆ヶ浜港接岸．
1420〜1430
- 出現鳥：オオミズナギドリ70，ハイイロミズナギドリ1，ウミネコ1
- 備考：1420 三宅島錆ヶ浜港出港．トビウオ2．
1430〜1440
- 出現鳥：オオミズナギドリ130，ハイイロミズナギドリ1
- 備考：船がやたらに振動しはじめる．トビウオ2．
1440〜1450
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ23
1450〜1500
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ26
- 備考：トビウオ8
1500
- 位置：34-17.0N，139-28.7E
- 針路：11度，船速：40.8km/h（22.0ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：9時，風：よわし，波：小
1500〜1510
- 出現鳥：オオミズナギドリ73，ハシボソミズナギドリ1
1510〜1520
- 出現鳥：オオミズナギドリ59，ミズナギドリ類1
- 備考：オオミズナギドリがソアリングをはじめた．
1520〜1530
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ180，ハイイロミズナギドリ2
- 備考：トビウオ4
1530〜1540
- 出現鳥：オオミズナギドリ182
- 備考：黒茶色で小さめの鳥が潜っていた．トビウオ3．
1540〜1550
1550〜1600
- 出現鳥：オオミズナギドリ176，ハイイロミズナギドリ1，アオツラカツオドリ成鳥1，ウミツバメ類1
- 備考：アオツラカツオドリ成鳥が現れた．船舶が輻輳してきたので，そのうちの 1隻に乗ってきたものと思われる．
1600
- 位置：34-37.6N，139-33.1E
- 針路：22度，船速：38.0km/h（20.5ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：8時，風：よわし，波：小 2時
1600〜1610
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ1，オオミズナギドリ220，ハシボソミズナギドリ1
1610〜1620
1620〜1630
1630〜1640
- 出現鳥：オオミズナギドリ506，ハイイロミズナギドリ2
1640〜1650
1650〜1700
- 出現鳥：オオミズナギドリ998，ハイイロミズナギドリ1
1700
- 位置：34-56.9N，139-42.1E
- 針路：34度，船速：36.1km/h（19.5ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：9時，風：よわし，波：なし
1700〜1710
- 出現鳥：オオミズナギドリ1350，ハイイロミズナギドリ1
- 備考：トビウオ1
1710〜1720
- 出現鳥：オオミズナギドリ1610，ミズナギドリ類2
- 備考：海面に浮いていた黒いミズナギドリ類 2羽が飛び立った．
1720〜1730
- 出現鳥：オオミズナギドリ250，ハイイロミズナギドリ3，クロウミツバメ1
1730〜1740
- 出現鳥：オオミズナギドリ80，ハイイロミズナギドリ5，ミズナギドリ類2
1740〜1750
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ2，オオミズナギドリ9，ハイイロミズナギドリ5，オーストンウミツバメ1，ウミツバメ類1
- 備考：1745 東京湾に入る．
1750〜1800
- 出現鳥：シロハラミズナギドリ2，ハイイロミズナギドリ2，アオサギ3
- 備考：アオサギがカラフルに見える．海の水が汚い．
1800
- 位置：35-13.2N，139-47.0E
- 針路：9度，船速：24.0km/h（13.0ノット）
- 天候：晴れ
- 太陽：10時，風：よわし，波：なし
1800〜1810
1810〜1820
1820〜1830
1830〜1840
1840〜1850
- 出現鳥：ミズナギドリ類2
- 備考：太陽が雲にかくれて暗く，鳥の識別が困難．
1850〜1900
1900
- 位置：35-25.1N，139-47.1E
- 針路：62度，船速：32.8km/h（17.7ノット）
- 天候：曇り
- 太陽：没，風：よわし，波：なし
- 備考：探鳥終了．
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